2018年12月、私たちの婚礼式は、昔ながらの祝言のスタイルで私が育った自宅で行った。結婚式に特別なこだわりがあったわけではなく、ブライダルフェアに参加しても煌びやかで華やかだけどなかなか心が動かなかった。
そんな時、写真家の三澤武彦氏の『自宅で花嫁のすすめ』という一冊の本と出会った。その本には今まで撮影してこられた、花嫁の自宅で花嫁姿になられた方々の作品とストーリー、自宅で花嫁になるための具体的なことや結婚式の在り方についての思いなどが綴られていた。その写真の数々に魅了され、そこに書かれていた内容にとても共感した。そして『日常の延長にある結婚式』という考え方に感銘を受けた。
私たちはその世界観に感動し、三澤氏に依頼することを決めた。そのなかで特に魅かれた写真があった。年老いたおばあちゃんが曾孫の花嫁姿を見てマザーテレサのように慈しみにあふれた表情をして曾孫の手を握りしめている写真だ。半年前に94歳だった祖母が亡くなったばかりの私は、祖母の初盆の頃だったこともあり自分の祖母と重ね合わせ思わず涙があふれていた。『最期に祖母にもこんな表情にさせてあげたかった』という思いも自宅で花嫁になることを、あと押ししてくれた。
私の実家は滋賀県ののどかな里山にある築100年以上の古民家で、曾祖父の代から続く本家だったこともあり、よく人が来て賑やかだった。
母は23歳の時にこの家に嫁ぐが、私が3歳の時に父が亡くなった。父亡き後もこの家に残り、私たちを育て、祖父や祖母を看取り、家を守ってきてくれた。そんな思い入れのある家で今は亡き大切な人達を感じながら育ててくれた感謝を母へ伝えたいと思った。
また、父がいなかった私は周りのたくさんの人に気にかけてもらっていた。里山の田舎なので豊かな環境や地域の関わりの中でも育ててもらった。だからこそ生まれ育った土地で地域の人たちにも、花嫁姿を見てもらいたいと思った。
婚礼の儀から始まり、庭での餅つきや江州音頭での祝いの舞など、古き良き伝統を取り入れた。江州音頭とは近畿各地で盆踊りなどで歌い継がれている、古くから滋賀県に伝承される民謡だ。祖父兄弟が家に集まりお酒が入って楽しくなると江州音頭を歌い踊っていたそうで、その楽しい光景は近所でも有名だった。しかし父が亡くなると、そのような光景はなくなっていった。
この日のためにと音頭取りを学び習得してくれた姉と大叔父の歌に合わせて踊った光景は、昔のように家が活気にあふれたことをみなが楽しんでくれているようで大きな喜びだった。
三澤氏にアドバイスをいただきながら自分たちで考えたオリジナル婚礼式は、母と姉をはじめ参加してくださった皆さんのおかげで私たちの至らない部分をサポートしていただき無事に執り行うことができた。たくさんの愛に包まれ自分の恵まれている環境に改めて感謝する一日となった。私の意見を受け入れ、当日は司会から花婿までをこなしてくれたkazuyaにも感謝。
大叔父も60年以上も前にこの家で祝言を挙げている。今も大切にその時の写真が飾ってある。
この日は偶然にも三澤氏の誕生日だったのでサプライズでお祝い。
婚礼式の一週間後、二人で実家に帰った時にふと外を見ると家の上に大きな二重の虹がかかっていた。まるで遠いところから『あっぱれ』と言ってくれているような気がした。
この感謝の気持ちをまた次のカタチに繋げていきたい。